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白木信一郎の「投資運用苦楽」

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第247回  コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)について 

2016年02月26日

昨年、ベンチャーキャピタルについて、本コラムでも少しコメントをしましたが
(第236回 日本のマイクロキャップとベンチャーキャピタル)、最近、多くの大学や企業においてベンチャー投資を行う動きが活発化しています。日本に限らず、潜在成長率が低迷している先進諸国において、イノベーションを求める動きが活発化することは当然のことと言えるかもしれません。特に、企業においては更なる成長を、あるいは新たな収益源を求めてベンチャー投資を行うことは、従来から行われてきました。2014年、2015年は、2000年のドットコムバブル以来のベンチャー投資ブームの再来とも言われており、今年もその傾向は続いているようです。

1960年代、80年代、90年代そしてドットコムバブルを経て現在に連なるCVCの歴史で、その役割や投資目的、手法などは様々でした。母体企業がノンコア事業への展開を目指して部門を会社化し(スピンアウト)投資するケース。既存事業の推進や新規事業の発展のために外部のスタートアップ企業に投資を行うケース。日本では90年代後半から2000年初頭にかけて同様の流れが見られましたが、幾つかの問題点もありました。特に母体企業から直接、あるいはCVCに派遣された担当者にアーリーステージ企業への理解がないこと。また、投資ノウハウ自体が欠如していること。また、往々にして投資判断者に権限がなく、母体企業での判断に時間がかかりすぎてしまうケースなどがありました。

近年、グーグル・ベンチャーズやインテル・キャピタルに代表されるCVCの投資を見てみると、ファンドからの投資を、最終的には有望な外部ベンチャー企業を母体企業に取り込む(スピンイン)ために活用しているケースが目立つようになりました。米国での研究を見ると、主にリターン目的の独立系ベンチャー・キャピタルと比べて、CVCは投資対象企業の上場成功率が高く、成果が出やすいとの結論も見られます。母体企業がCVCを活用するメリットを簡単にまとめてみると、【1】自社内R&D;と比較して新技術に対する情報を効率よく収集できること、【2】新規参入者の脅威から自社を守ること、【3】他の投資家と協働しやすく投資のスケールメリットが望めること、【4】関連成長分野への投資を通じて自社既存商品の需要を喚起できること等があげられます。

一方、CVCは母体企業の看板を背負っての投資家であるため、同一業界内の起業家にとっては脅威ととらえる向きもあります。したがって、有望なベンチャー企業の中には、ノウハウを奪われ、模倣製品を簡単に市場に投入されるとの不安があり、CVCからの投資を受入れないこともよく見られます。これは、知的所有権の観点からCVCを研究した米国ペンシルバニア大学やミネソタ大学の教授らによって「CVCのパラドックス」と名付けられた事象です。しかし、近年のケースでは、CVC及びその母体企業が投資対象企業に対し共同技術開発を申し出たり、投資後のゴールを決めて対象企業株式をすべて買い取る等のオプション契約を事前に交わす等、パラドックスを回避すべく様々なアプローチもとられているようです。日本においては、独立系のベンチャーキャピタルが少なく、米国と比べて大きな成果を出すベンチャー企業も限られています。日本は、他国に比べて企業によるR&D;が盛んだった歴史を持っています。もちろん起業家があってのことですが、今後のCVCの発展が日本のイノベーションを刺激するようになればと願っています。



白木信一郎:
アストマックス投信投資顧問株式会社 取締役CIO
ロンドン・ビジネススクール卒
1990年代はじめから債券投資、運用業務を経てヘッジファンド及びプライベートエクイティファンド等のオルタナティブ資産への投資を担当。ヘッジファンドの投資戦略に詳しく、セミナー、コンファレンス等において講師もつとめる。
AIMA(オルタナティブ・インベストメント・マネジメント・アソシエーション)日本の代表理事兼会長。
著書に「完全版 投資ファンドのすべて (2014)」 (金融財政事情研究会)
「投資ファンドのすべて (2006)」(金融財政事情研究会)
http://store.kinzai.jp/book/12407.html
http://store.kinzai.jp/book/10985.html

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