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白木信一郎の「投資運用苦楽」

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第213回 ベンチャー投資について

2014年09月26日

私どもが、ベンチャーキャピタルを含めたファンド投資を開始してから、会社としては10年が経とうとしています。日本におけるベンチャーキャピタル、あるいは、ベンチャーキャピタルを経由したスタートアップ企業への投資について、この10年間を振り返ってみると、大変難しい局面が多かったというのが率直な感想です。過去20年以上の日本国内のベンチャーキャピタルの平均的な成績を見てみると、特に米国のベンチャーキャピタルの成績との差は顕著に出ており、ほとんど収益が上がっていない状況が続いていました。もちろん、過去20年間でも、日本においても華々しいIPO(株式上場)を果たしたベンチャー企業も多くみられましたが、米国に比べてそのダイナミズムは限定的でしたし、その中で、「ベンチャーキャピタル」が果たす役割は、数量においても規模においても限定的だったかと思います。

安倍政権における「成長戦略」の政策の柱の一つで、今年の6月24日に閣議決定した「日本再興戦略 改訂版 2014」の中では、ベンチャー支援の強化が盛り込まれており、産業の新陳代謝とベンチャーを加速させる旨が述べられています。また、新規企業の開業率を現在の5%から10%台に倍増させるなど、数値目標も掲げられています。その中では、日本のベンチャーの課題として、「挑戦する人とそれを支えるリスクマネーの両方が少ない」「グローバル化ができていない」「大企業とベンチャーの連携が不足」「技術開発型や地域発のベンチャーが少ない」等の課題が指摘されています。そのうえで、政策的にも長期に雇用とイノベーションを創造する可能性のあるベンチャーの支援を行っていくという内容のものです。

成長戦略の中で描かれていることは、正しいと思いますし、適切で継続的な政策の後押しは必要だと思います。但し、政府によるサポートがあったとしても、一番重要な点、つまり、ベンチャーをスタートしてやり遂げる人材や、それを支える資金が不足している点は、政府のサポートだけに頼っていても改善しない分野です。また、成功したベンチャーが新しいベンチャー企業を資金面に限らず、運営面でもサポートできるような循環システムの存在も必要になります。これまで、日本における「ベンチャーキャピタル」が十分にその役割を担ってきたとは言えないと思います。また、日本にも「エンジェル投資家」といえる存在が数は少ないとはいえ存在します。しかし、シリコンバレーとは比較もできません。

日本には、プロの経営者が少ない、ということはよく聞かれました。ここ数年で、大企業の経営をけん引していくCEOが他社から移籍するケースがみられるようになりましたので、この面では少しずつ変化がみられると思います。しかし、日本における「シリアルアントレプレナー」、つまり、起業を繰り返し成功させていくタイプの起業家はとても少ないと思われます。勿論、文化の違いもありますが、徐々にこのような存在が増えてくることで、ベンチャーのすそ野は広がると思います。また、ベンチャーキャピタルも、これまでの銀行等の金融機関主導の投資家から、起業を経験したことのあるベンチャーキャピタリストが増えることで、ベンチャー投資の活性化やパフォーマンスの改善が見込まれるのではないかと考えています。私たちも、そのようなベンチャーが成功する循環システムの構築の一端を担えるように、ベンチャーキャピタル、あるいはベンチャー投資のプログラムの火を絶やさずに続けていきたいと思います。





白木信一郎:
アストマックス投信投資顧問株式会社 取締役CIO
ロンドン・ビジネススクール卒
1990年代はじめから債券投資、運用業務を経てヘッジファンド及びプライベートエクイティファンド等のオルタナティブ資産への投資を担当。ヘッジファンドの投資戦略に詳しく、セミナー、コンファレンス等において講師もつとめる。
AIMA(オルタナティブ・インベストメント・マネジメント・アソシエーション)日本の代表理事兼会長。
著書に「完全版 投資ファンドのすべて (2014)」 (金融財政事情研究会)
「投資ファンドのすべて (2006)」(金融財政事情研究会)
http://store.kinzai.jp/book/12407.html
http://store.kinzai.jp/book/10985.html

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