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白木信一郎の「投資運用苦楽」

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第209回 流動性プレミアムによる投資リターンの追求

2014年07月25日

現在の投資環境は、先進各国の流動性供給に支えられ、また、米国の景気指標や企業業績が安定していることもあって、この10年間でも相当良好なものとなっていると思われます。米国のエネルギー事情が長期的に改善していることも見逃せません。さらに、昨年まで、先進国にのみ流入していた資金もようやく新興国市場にも向かい始めており、中小型株式にも資金が流れています。世界の主要都市の不動産価格の高騰は続き、遅れていた日本の不動産価格も底打ちした気配があります。2008年の金融危機以降低下していたレバレッジも上昇し始めたようです。このように様々な指標や目に見える投資行動が機関投資家、個人投資家の投資の活発化を指し示しています。先日実施したサーベイでは、多くの投資家が年末の日経平均株価を2万円と非常に強気な予想をたてていました。もっとも、多くの投資家が金融危機以降の保守的な運用姿勢を崩していないこともあり、投資バブルに湧きかえっている、という雰囲気でもありません。そのことも、今回の良好な投資環境を長引かせる要因になると考えられます。

何年か好調な投資環境が継続すると、過去のサイクルを見ると、投資家は流動性プレミアムを選好するようになります。特に、現在のような低金利環境においては、一桁後半もしくは二桁パーセントの絶対収益を得るためには、流動性を犠牲にした投資に目が向くのは当然になります。日本の機関投資家のように、低金利、低収益環境に慣れた投資家は別として、グローバル投資家の多くは、引き続き高めのリターンを求める傾向にあります。また、日本においても、近年イールドカーブがつぶれてきており、高格付けかつ流動性の高い投資対象においては、アジアの債券にまで手を伸ばしたとしても、円建てでは2%のリターンを求めるのも困難な状況です。現在、安定的に4%以上のリターンを期待できる投資対象で、機関投資家が投資可能なアセットクラスとしては、「新興国債券」「低格付けクレジット商品」「仕組債」「不動産」「PEファンド」「インフラストラクチャー」などになってきていると思われます。これらの投資対象は、原則として長期保有になりますし、金融危機時などには真っ先に流動性がなくなり、売却が困難になるのが特徴です。

過去、分散投資の観点から様々な投資対象を組み入れてきた機関投資家は、これらのアセットクラスを組入れることで、リターンの出方を滑らかにする効果を期待しました。たしかに平常時には、分散効果は有効であり、リターンの安定化につながりました。しかし、度々起きた金融危機時には、流動性の低いアセットクラスは、大幅な評価損失を計上することも多く、バランスシートを圧縮せざるを得なくなった機関投資家の売却が重なって、大きな実現損失に結びつくことが少なくありませんでした。更に、レバレッジをかけた投資が含まれている場合には、最悪全損につながるケースや、金融機関の破たんに拍車をかけるケースなどが見られました。特に2008年の経験を踏まえて、機関投資家は流動性の低いアセットクラスへの投資に非常に慎重になってきました。また、金融監督当局も、市場のシステマティック・リスク軽減の観点から、非流動性資産への投資を制限する方向に動いていました。

このような機関投資家による保守的な動きや、当局による制限があったために、非流動性資産における流動性プレミアムは、かなり拡大していたと思われます。結果として、リスク・リターンの観点からも、現在の非流動性資産は、投資家にとって高い収益性を比較的低いリスクで提供している状態ともいえます。このようなアセットクラスに、少しでも高い利回りを求めて多くの機関投資家が食指を伸ばしているように見えます。今後2−3年間でこの流れが本格化したとき、次の金融危機に向けて投資家のリスク許容度が試されるのかもしれません。



白木信一郎:
アストマックス投信投資顧問株式会社 取締役CIO
ロンドン・ビジネススクール卒
1990年代はじめから債券投資、運用業務を経てヘッジファンド及びプライベートエクイティファンド等のオルタナティブ資産への投資を担当。ヘッジファンドの投資戦略に詳しく、セミナー、コンファレンス等において講師もつとめる。
AIMA(オルタナティブ・インベストメント・マネジメント・アソシエーション)日本の代表理事兼会長。
著書に「完全版 投資ファンドのすべて (2014)」 (金融財政事情研究会)
「投資ファンドのすべて (2006)」(金融財政事情研究会)
http://store.kinzai.jp/book/12407.html
http://store.kinzai.jp/book/10985.html

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